ここでは申請から受給までの流れを詳しく解説していきます。
はじめて失業保険を受給したいと考えている方は、こちらの記事で不安を解消しましょう。
(一般的に『失業保険』と呼ばれるものは、雇用保険の中の手当の一つで、「基本手当」というのが正式名称です。こちらについて解説していきます。)
Contents - 目次 -
失業保険の受給条件とは?
失業保険を受給するには、いくつかの条件を満たすことが必要です。
「前提となる条件」と、「実際に受給するための条件」を詳しく見ていきましょう。
前提条件
まずはじめに、前提条件の2つを見ていきます。
ここをクリアしていなければ、失業保険を受給することはできません。
雇用保険の被保険者であること
1つ目は、雇用保険に加入していることが必要です。
加入している方のことを「被保険者」と言います。
お勤め先の会社で雇用保険に加入している人がいたとしても、あなたが加入しているとは限りません。
雇用保険には、加入条件があるため、人によって加入していない場合もあります。
確認方法として最も簡単な方法は、毎月の給与明細を確認することです。
ここで雇用保険の被保険者になっている場合は、雇用保険料の項目が記載されています。
加入条件について 原則としては、「週20時間以上、継続して31日以上働いている方」であれば加入対象となります。雇用形態に関わらず、アルバイト・パート、派遣も対象になります。 この原則を満たしている場合、雇い主である事業主は、対象者を雇用保険に加入させる義務があります。
65歳未満であること
2つ目は、65歳未満であることです。
一般的な失業保険(雇用保険の基本手当)は、65歳未満でないと適用されません。
では、65歳以上は何ももらえないのか?ということになるのですが、そこはご安心ください。
65歳以上の場合は、別な制度で失業時に保障が用意されています。
その名も「高年齢求職者給付金」と言います。
詳しく知りたい方は、下記の記事をご確認ください。
-
【失業保険】65歳以上は高年齢求職者給付金がもらえる|注意したい申請期限
続きを見る
受給条件
ここからは実際に受給するための条件を見ていきます。
前提条件を満たしている方が、これからお伝えする3つの条件を満たすことで、失業保険を受給することができます。
1:失業状態にあること
1つ目の条件は、「失業状態」にあることです。
失業と言うと、突然解雇を言い渡されたて、仕事を失った人のことをイメージされがちです。
但し、失業保険を受給する条件の「失業状態」とは次の定義となります。
失業状態とは、、
「就職したいのに仕事ができない状態」を指します。
簡単に言うと、こうなるのですが、細かくは3つの要素を満たす必要があります。
- 仕事に就くことを希望している
- 仕事をする能力が備わっている
- 積極的に就職活動をしている
1.仕事に就くことを希望している
仕事に就くことを希望していない人は、対象にはなりません。
例えば、結婚を機に退職し、育児に専念しようとしている人は対象から外れます。
また、定年退職し、退職金や年金で生活していこうとしている人も対象から外れます。
2.仕事をする能力が備わっている
仕事ができる状態にないと対象にはなりません。
例えば、いくら働きたくても、病気や怪我で働けない状態にある人は対象にはなりません。
また、妊娠中や出産直後で働ける状態にない人も同様です。
3.積極的に就職活動をしている
積極的に仕事に就けるよう、就職活動をしていなければなりません。
それでも直ぐに就職できない人の生活を保障するために失業保険があります。
働き方が多様化しているため、色んな事情にある方がいると思います。
原則の考え方に即して、3つの要素を満たしているか確認してみましょう。
2:被保険者期間が一定以上であること
2つ目に、雇用保険の加入期間(被保険者期間)が条件となります。
雇用保険に加入していても、期間が短いと対象になりません。
その被保険者期間が【1年以上】あることが必要です。
加入条件を満たしていれば、だいたい入社時から加入となるため、単純に「勤務継続年数」ということにもなります。
厳密には、1ヶ月の間に、11日以上お仕事をされた月を、被保険者期間としてカウントします。これが、退職前の2年の間に、12ヶ月以上必要となります。
よって、1年以上という表現をさせていただきました。
1年以上お勤めされている方であれば、よほど休んだ日が多くならない限りは、満たせる条件と思います。
3:ハローワークで手続きを行うこと
3つ目、ハローワークで手続きを行う必要があります。
退職後、決まった期限内に手続きをしないと、失業保険がもらえなくなってしまうので注意しましょう。
受給期間は、原則「1年」です。
退職後、1年を経過するまでに手続きを行い、失業保険を受け取る必要があります。
1年を経過するギリギリで手続きに行くのでなく、できるだけ早めに手続きにいかれることを推奨いたします。
後述しますが、人によって給付日数が異なります。
せっかく長く給付を受けれたとしても、手続きが遅れることで受給できなくなってしまうケースもあるので注意が必要です。
尚、退職した翌日から1年の間に、下記の理由で、「引き続き30日以上」職業に就くことができない場合は、受給期間を最高「4年」まで延長することができます。
- 妊娠
- 出産
- 育児
- 疾病または負傷
- その他、公共職業安定所長がやむを得ないと認めるもの
つまり、妊娠出産で直ぐに仕事に就けない方は、事前に受給期間を延長しておけば、
仕事に復帰したいと思ったタイミングで失業保険を受給することが可能になるのです。
給付日数と給付時期
失業保険は、退職理由によって、受給内容が異なります。
特に、受給総額に関わると「給付日数」と、いつからもらえるかに関わる「給付時期」については大事な要素になります。
退職理由は、自己都合によるものか、会社都合によるものかに分かれます。
この「自己都合」か「会社都合」かによって、失業保険の受給に大きく影響してくるのです。
給付日数
まず、給付日数は、下記の表が示す通り、
同じくらい長く働いたとしても、もらえる日数が大きく変わってきます。
区分/
算定基礎期間 |
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | |
一般の受給資格者 (自己都合の退職) |
90日 | 120日 | 150日 | |||
就職困難者 | 45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上
65歳未満 |
360日 | |||||
特定受給資格者 (会社都合の退職) |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上
35歳未満 |
120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上
45歳未満 |
150日 | 180日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上
60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上
65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
給付時期
給付時期で、お伝えしたいのは、失業保険をいつから受給できるのかです。
「自己都合退職」の場合は、給付制限期間が原則3ヶ月あるため、それまでの間、失業保険がもらえません。
これに対して、「会社都合」の場合は、給付制限が掛かりません。
実際には待機期間というのがまた別であって、いづれの場合も7日間は、支給対象とはならないので、ご留意ください。
尚、最初の手続きから、給付制限を経て、「失業認定日」を待ち、その後の振り込みとなるため、実際にお金を手にするまでには時間を要します。給付制限がある場合は4ヶ月ほど、給付制限がない場合でも早くて1ヶ月ほど掛かります。
サイクルとしては、
最初の手続き(離職票提出)→待機7日→最初の失業認定(待機から21日後)→給付制限があけた後の2回目の失業認定→最初の失業保険が振り込まれる
という流れになります。
2回目以降は、28日サイクルです。
待機の7日間は給付対象となりません。
失業保険はいつまでもらえるの?
失業保険は、前述の通り、人によって「給付日数」が異なります。
また、原則は受給期間が「1年」と決まっています。
例えば、90日の給付日数の人であれば、退職から1年の間に、90日分を受給することができます。
逆に言うと、手続きが遅れてしまうと、折角90日分もらえあはずが、60日分しかもらえないという事にもなりかねません。
特殊事情で給付日数が「330日」「360日」になる場合は、それぞれ「1年+30日」「1年+60日」の受給期間となります。
尚、失業保険の受給期間中に、病気や怪我、出産や育児などの理由で30日以上継続する事情が生じた場合は、その期間延長する事が可能です。
逆に言えばここさえ抑えておけば、失業保険を受給することができます。 あとは、退職理由によって、内容が大きく変わることは覚えておきましょう。
失業保険の受給手続きの流れと必要な書類について
それでは、失業保険を受給するために必要な書類と、手続きの流れを確認していきましょう。
必要な書類
はじめに必要なモノを整理します。
下記、必要な書類の一覧になります。
・離職票
退職後に、勤めていた会社から受け取ります。
・雇用保険被保険者証
勤めていた会社へ入社した時に受け取っているものです。
会社が保管しているケースもあるので、その場合は退職時に渡されます。
・マイナンバーの番号を証明するもの
以下のいづれかが必要となります。
・マイナンバーカード
・マイナンバー通知カード
・番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
・身元確認書類
マイナンバーカードがある場合は不要です。
無い場合は、指定された書類が必要となります。※
・証明写真
最近の写真で、正面上半身の縦3.0cm×横2.5cmが2枚必要です。
・通帳
失業保険で支給される金額の振込先となります。
ネット銀行、外資系金融機関の口座など一部使用できない金融機関があります。
(ゆうちょ銀行は可能です。)
・印鑑
認印で大丈夫ですが、シャチハタは不可です。
身元確認書類について
下記、(1)のいづれか1つ、もしくは(2)の内いづれか2つが必要となります。
(コピー不可です。(1)が無い場合は、(2)の書類で対応しましょう。)
(1)いづれか1つで証明できる書類
・運転免許証
・運転経歴証明書
・マイナンバーカード
・パスポート
・官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)いづれか2つ必要な証明書類
・公的医療保険の被保険者証(国民健康保険被保険者証、健康保険被保険者証など)
・年金手帳
・児童扶養手当証書または特別児童扶養手当証書
・印鑑登録証明書、公共料金の領収書、写真のない住民基本台帳カードなど
会社都合の退職を相談したい人
会社には、自らの希望で退職することを願い出ていた場合でも、実際は残業やパワハラが原因で退職された方もいると思います。
その場合は、それらを証明できる書類も持参しましょう。
内容が認められれば、ハローワークで会社都合の退職と認定してもらえます。
上記のような理由で認められた方は、「特定受給資格者」に当たります。
このほか、「特定理由離職者」として【会社都合の退職】と認められる場合もあります。
特定理由離職者は、前述の特定受給資格者に該当しない人で、
「期間の定めのある労働契約の期間が満了し」且つ「労働契約の更新がないこと」、
その他やむを得ない理由により離職したものとして厚生労働省令で定める人、をいいます。
会社都合の退職については、下記の記事にも詳しく書いています。
-
失業保険|もらい方のコツは会社都合の認定を受けること?転職もOK
続きを見る
手続きの流れ
ここからは、実際の手続きの流れを見ていきます。
離職票を受け取る
離職票を勤めていた会社から受け取ります。
たいていの場合、退職後なので、郵送でご自宅へ届けられます。
離職票は、会社がハローワークへ退職者の届けを行い、その後ハローワークが内容を確認した上で発行されます。
発行された離職票が会社に届いた後に、あなたに郵送される流れになるため、早くても1週間~10日くらいは掛かるものになります。
失業の認定を受ける
離職票が届いたら、前述の必要書類を用意して、お近くのハローワークへ行きましょう。
ハローワークの受付窓口に行き、失業保険を受給したいことを伝えれば案内してくれます。
失業状態を確認され、「受給資格者証」を受け取ります。
受給期間中はこれが常に必要となります。
今後の受給までの流れについて説明を受け、必要な資料を受け取ります。
また、退職理由や継続勤務期間、年齢によって、受給日数が変化します。
あなたがどれくらいの金額を、何日分もらえることになりそうか、ここで説明してくれます。
尚、この日を起点に、今後、定期的にハローワークへ行く日も決定します。
これを失業認定日と言います。
求職活動の実績をつくる
指定された次の失業認定日までに、求職活動の実績をつくります。
これがないと、仕事に就く意思が無いものとみなされ、失業保険の受給対象としてもらえません。
28日サイクルで「失業認定日」が訪れますが、その間に原則2回の活動実績が必要です。
初めの1回は、より詳しい失業保険の説明会への参加となります。
その後は、面接や説明会の参加などはもちろん、ハローワークでの就職相談なども活動実績となります。
失業認定日ごとにハローワークへ通う
最初に、ハローワークで説明を受けてから28日後に「失業認定日」が訪れます。
前日までにつくった活動実績を元に、「失業認定申告書」に必要情報を記入して、ハローワークへ持参しましょう。(失業認定申告書はハローワークで渡してくれます。)
この時、前日までの28日間の失業状態を確認されます。
失業状態に問題がなければ、その日までの日数分、失業保険を受給することができます。
その場で、いくらになるか計算され、金額を伝えてもらえます。
後はハローワークの方が振込の手続きをしてくれるので、早ければ1週間もかからずに振り込んでもらえます。
細かいケースもいくつかあるので、より詳しく知りたい内容は他の関連記事もご覧いただければ幸いです。
よくある疑問
失業保険の手続きを進める中でよくある疑問についてお答えします。
離職票が届かない場合
離職票が届かず、困っているという声をたまに伺います。
前述のとおり、会社がハローワークへ手続きを行った後に発行されますので、直ぐに届くものではありません。
届かない場合の可能性としては以下が挙げられます。
- 適正な時間がまだ経過していない(1-2週間)
- 会社は手続きしているが、ハローワークが立て込んでいるため遅延している
- 会社がハローワークへ手続きするのが遅れた
- 会社がハローワークへの手続きを忘れている
- 会社がハローワークへの手続きを拒否している
会社との関係性が良好であれば、気になったタイミングで「離職票」の受取りを急いでいることを伝えましょう。その上で、現在の進捗を聞けるようであれば聞いてみるのがいいですね。
困るケースは、会社との関係が良くないために、状況を確認しづらい場合ですね。
こういった時は、ハローワークへ状況を相談しましょう。ハローワークの方から、会社へ「離職票」を送るよう話をしてくれます。
失業認定日とは?
失業認定日とは、受給者が「失業状態」と認められる状況にあったかどうかの確認を受ける日です。
ハローワークへ最初に手続きへ行った日に、失業認定日が決まります。
失業保険の受給期間中は、28日(4週間)サイクルで、この失業認定日が訪れます。
例えば、水曜日に最初に行った人であれば、その28日後は毎回水曜日のサイクルになります。基本的には、スケジュールは変えてもらえないので注意しましょう。
尚、失業認定日には、その前日までの28日間について、アルバイトなどの仕事を行ったかどうかや、求職活動の実績があるかどうかを確認されます。これで「失業状態」か否かを判断され、失業保険の給付額が決まります。
*万が一、急な体調不良や家族の事情などで、失業認定日に行けなくなった場合、理由によっては後日に変更してもらえます。
但し、自己の勝手な判断で行かなかった場合は、次の失業認定日まで受給できなくなりますので注意してください。
支給される金額は?
支給される金額の総額は、「1日あたりの給付額」と「給付日数」によって異なります。
それぞれ下記の内容が影響します。
- 働いていた時のお給料
- 年齢
- 継続勤務期間
- 退職理由
ちなみに「1日あたりの給付額」は、正式名称で「基本手当日額」と言います。
例えば、これは退職前の給与の50~80%となりますが、給与の額に大小によっても異なってきます。
詳細はここでは書ききれないため、他の記事でご紹介しています。
-
【保存版】失業保険(手当)をもらえる条件と受給金額の違い|計算方法まで詳しく解説
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手続きはいつまでに行うべき?
手続きは、離職票を受け取ってから、できるだけ早くハローワークへ行きましょう。
離職票を受け取った後の手続きですが、退職後2週間くらいで行けたらいいですね。
手続きが遅れてしまうと、前述の通り、受給期間中に、受け取れる「給付日数」分を全て受け取れなくなってしまうリスクがあります。
失業保険を受給中の扶養について
受給額によって、扶養に入ることはできなくなるので注意が必要です。
-
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失業保険の受給期間中に再就職が決まった場合
再就職が決まったら、当然ですが失業状態ではなくなるため、失業保険も受給できなくなります。
但し、予定された給付日数の残日数が多い場合は、再就職手当が出ます。
-
申請忘れてない?もらい損ねたくない再就職手当の条件【計算例あり】
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失業保険の手続きの注意点
手続きで注意したいのが、不正受給です。
よくあるのが、失業保険を受給している間のアルバイトです。
アルバイトを行っても、内容によって失業保険を受け取ることはできるのですが、申告をしなければ不正行為となります。
もし不正受給が発覚してしまいますと、それまでに支給された金額のほか、その2倍の金額が罰金として科されます。合計で、受給額の3倍を返還するリスクがあるのです。(俗に失業保険の3倍返しとも言われます)
まとめ
失業保険の手続きや、それに伴う疑問は解決できましたか?
きちんとした手続きを踏めば、雇用保険に入っている方であれば、誰でも受給できる権利です。
人によって異なる点もありますが、関連記事も参考に、受給時の不安を解消してください。