年金

【年金が支給停止?】老後も働く人が知りたい在職老齢年金とは

11月 20, 2019

在職老齢年金

老後も働く人は、年金が下がると聞いたのですが。。

それは在職老齢年金制度のことですね。制度の概要や停止されるパターンを解説します。

注意

年金の支給は原則65歳からですが、60〜64歳でもらえる「特別支給の老齢厚生年金」もあります。

こちらは申請しないともらうことができず、もらい損ねている人が多いのです。もらってしまうと65歳以上の年金も減少してしまうと勘違いされがちですが、65歳以上でもらえる原則の年金には影響しません。尚、時効は5年なので、それまでに手続きしないともらえなくなってしまいます。大きく損してしまいますのでご注意ください。

在職老齢年金制度とは

在職老齢年金とは、会社に勤めて給与が支払われている人が受取れる、老後の年金のことです。

お勤め先の給与が一定額以上の人は、年金の額を調整しましょう、という制度になっています。

年金は老後の生活を支援するものですから、働いてお金を稼げる人は、そんなに年金なくても大丈夫だよね。財源は限られているからその分を他に回しましょう。という考えが背景にあったようです。

対象となる人

対象となるのは厚生年金に加入していた人です。

老後の厚生年金が受給できるタイミングで、会社に勤めて一定額以上の給与が発生している人が対象となります。

国民年金のみの人に、この制度は関係ありません。

支給停止パターンと受給額

働いていると年金の額が調整されるということですが、具体的にはどれぐらい調整されてしまうのですか?

もらっている給与の金額によって、一定の金額が下がる、もしくは支給停止になります。

それでは、支給停止や年金額が調整される場合は、どうやって決まるのか見ていきましょう。

原則の支給開始65歳以上と、特例の60〜64歳の場合で計算方法も異なるので、分けてご説明します。

原則:65歳以上の支給停止パターン

まず原則からですね。給与の金額によって3パターンに分かれます。

1:全額支給される人

 計算式:「総報酬月額相当額」+「基本月額」=<47万円

ややこしいですね。簡単に言い換えると、

「平均月収」+「年金の月額」=<47万円 

です。

要は、給与と年金を足して、月額47万円を超えない人は、年金を全額支給しますよ。

と言うことになります。

2:一定の額が支給停止になる人

 計算式:「総報酬月額相当額」+「基本月額」>47万円

はい、ややこしいですね。こちらも言い換えると、

「平均月収」+「年金の月額」>47万円 

です。

給与と年金を足して、月額47万円を超える人は、一定の金額が支給停止されます。

支給停止される金額を「支給停止基準額」と言います。

停止額の計算式:

(「平均月収」+「年金の月額」- 47万円)×1/2 ×12

給与と年金を足して、47万円を超えた金額については、その半分を支給停止するということです。

3:全額支給停止となる人

 計算式:「支給停止基準額」> 「老齢厚生年金の額」

はい、よくわかりませんね。これは言い換えると、

(「平均月収」+「年金の月額」- 47万円)×1/2  > 「年金の月額」

となります。

給与と年金を足した金額から47万円を引いた額を半分にしても、年金より多いなら、そんなに生活困らないよね。じゃあ全額支給停止、ということですね。

ただ、こちらに該当する人でも「繰下げ加算額」「経過的加算額」は支給停止の対象から除かれるので、その分は支給されます。(「加給年金額」は除かれないので停止の対象となります。)

*平均月収や年金が改定された場合は、改定が行われた月から金額が再計算されます。

国民年金の老齢基礎年金の分は、こちらの影響を受けずに全額支給されます。

原則:65歳以上の金額イメージ

具体的な金額を当てはめてイメージを掴みやすくします。

今回の算出条件

  • 会社員で厚生年金に40年加入(年金の満額受給条件)
  • 男性の平均的な月収モデル

本来の年金受給額計算式(今回の例)

国民年金「年金の満額(780,100円)」×「保険料を納付した月数(480月)」/「480月(12月×40年)」=780,100円

厚生年金「平均月収(42万円)」×「5.481/1000」×「加入月数(480月)」=1,104,970円

計: 1,885,070円

*男性の平均月収モデルはH29厚生労働省の調査データを参考にしています。

こちらの年金受給者の場合で、1~3のパターンを見ていきます。

厚生年金を月額に換算すると、およそ9.2万円です。

1:全額支給される人

「平均月収」+「年金の月額」=<47万円 

の条件より、

47万円-9.2万円=37.8万円になりますから、

月収が37.8万円を超えなければ年金は全額支給されます。

2:一定の額が支給停止になる人

「平均月収」+「年金の月額」>47万円

の条件より、

47万円-9.2万円=37.8万円になりますから、

月収が37.8万円を超えれば年金は支給調整されます。

仮に、月収が42万円だとすると

(「42万円」+「9.2万円」- 47万円)×1/2 =2.1万円

となり、月2.1万円が支給停止となります。

3:全額支給停止となる人

(「平均月収」+「年金の月額」- 47万円)×1/2  > 「年金の月額」

の条件により

(「平均月収」+「9.2万円」- 47万円)×1/2  > 「9.2万円」

と考えると、月収56.2万円を超える人で初めて全額支給停止ということになります。

実際には老後にこれだけ給与をもらえる人は、現役時代にももっと稼がれていて年金の額も多いでしょう。

そうすると、対象になる人はもう少し年金をもらえた人が、月収40〜50万を超える時に、全額停止になると言えそうです。

特例:60〜64歳の支給停止パターン

特例で60〜64歳で年金を受給できる人の場合を説明します。

受給できる年金を「特別支給の老齢厚生年金」と言います。

(昔は60歳から受給できたのが、段階的に65歳に引き上げているため、ざっくり現在50歳以上の人はこちらに該当する可能性があります。)

60〜64歳で年金を受給できる人は、全額支給停止はないですが、調整されるパターンがあります。

平均月収と支給停止される前の年金の受給額によって、支給停止される金額が4パターンに分かれます。

平均月収 年金の月額 支給停止される月額
47万円以下 28万円以下 (「平均月収」+「年金の月額」ー28万円)×1/2
47万円以下 28万円を超える 「平均月収」×1/2
47万円を超える 28万円以下 (「47万円」+「年金の月額」ー28万円)×1/2+(「平均月収」ー47万円)
47万円を超える 28万円を超える 47万円×1/2+(「平均月収」ー47万円)

*47万円を支給停止調整変更額と言います。こちらはH31年に変更されています。

*28万円は支給停止調整開始額と言います。

ちょっと言い換えます。

①の人は、給与と年金足して、28万円を超えた分の半分の額を支給停止します。

②の人は、給与の半分にあたる額は支給停止します。

③の人は、年金と47万円を足して、28万円を超えた分の半分の額を支給停止します。加えて、月収と47万円の差額にあたる金額分も支給停止します。

④の人は、47万円の半分の金額を支給停止します。加えて、年金と47万円の差額にあたる金額分も支給停止します。

この様に、月収や年金の受給額によって、条件が異なるので注意しましょう。

繰下げ受給の活用

働くことができて、当面の生活費がまかなえる人は、繰下げ受給制度のことを知っておくといいでしょう。

そのまま年金を受け取ると支給停止に該当してしまう人でも、繰下げ受給を活用すると、最大70歳まで受取りを遅らせることで、本来受給できる額の42%アップで年金を受け取ることができます

とは言え、年金をもらわないと生活に困る人も多いでしょうから、その時はもらう判断で大丈夫です。

無理をして身体を壊すなんてことがあっては本末転倒でしょう。給与をもらっている間は、支給調整や停止がありますが、仕事を辞めた後は通常通りの年金が支給されますので、そこは安心してください。

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まとめ

ポイントを整理しましょう。

  • 収入の額によって年金が支給停止、調整となるかが決まる
  • 65歳からと60歳からでは支給調整の基準が異なる
  • 年金受給を繰下げて(遅らせて)、後で受給額を増やす方法もある

支給調整額をイメージして働き方や年金の受取り方を判断しましょう

補足

2019年には、高齢者の働く意欲を阻害するとして、支給停止調整変更額を廃止する意見や、51万円に引き上げる話も浮上しましたが、11月26日現在において、現状維持の方向で進んでいるようです。最新の情報は年金事務所で確認されることを推奨いたします。

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