・労災保険ってどんな場合に認定される?
・もらえる金額はいくら?
こんな疑問にお答えします。
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労災保険とは
労災保険とは、労働者が仕事上の病気やケガで、働くことができなくなった期間の収入を補償する保険です。(正式名称は、労働者災害補償保険と言います。)
労災保険は、仕事中に起きた事故だけではなく、通勤途中に起きた事故も対象としています。
また、万が一、労働者が亡くなってしまった場合の、遺族への補償も用意されています。
主な補償制度として、下記が挙げられます。
1:療養補償給付
病気やケガが治癒するまでを対象とした給付です。
2:休業補償給付
病気やケガで仕事ができずお休みする場合の給付です。休業4日目から支給されます。
詳しくはこちらの記事でもご紹介しています。
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【労災】知っておきたい休業補償!支給額の計算方法まで解説|交通事故も対象
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3:傷病補償年金
病気やケガで治療を開始してから1年6ヶ月が経過しても治らない場合の給付です。前述の「休業補償給付」をもらった後も、治療が長期化した場合に該当することになります。
詳しくはこちらの記事でもご紹介しています。
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【労災】仕事が関係する怪我や病気は「傷病補償年金」がもらえるかも?|受給はいつまで?
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4:障害補償給付
治療が終わり障害が残った場合、障害の程度によって支給されます。年金として支給される「障害補償年金」と、一時金として支給される「障害補償一時金」があります。
5:遺族補償給付
死亡した労働者の遺族に対して支給されます。
6:葬祭料
死亡した労働者の葬祭を行う人に対して支給されます。
7:介護補償給付
傷病補償年金もしくは障害補償給付を受給している人の中でも、特に障害が重い人が介護を受けている場合に支給されます。
労災の加入条件|誰がもらえるの?
労災保険の受給条件について詳しく見ていきます。
「労災保険」に加入している被保険者であることが前提となります。労災保険は、労働者個人ではなく、勤務先の会社が加入するものです。
勤務先の会社で労災保険に加入しているか確認しましょう。
企業の加入条件
労働者を一人でも雇っている会社は、原則、強制加入となるのが労災保険です。
但し、任意加入となる事業、適用除外となる事業もあります。
任意加入
・個人経営の農林水産業で、労働者が常時5人未満(林業は常時使用の労働者がいない)
・その他の個人事業
個人事業は、基本的に労災保険が任意加入となります。
(任意加入ということは、入るかどうかを事業主が選択できます。)
一方で、農林水産業で、常時雇用している労働者が多い事業では強制加入となります。
適用除外
・国の直営事業
・官公署の事業
これらの事業は他の法律で補償があるため、労災保険が適用されません。
労働者の加入条件
労災保険が適用される企業に勤める労働者の方は、雇用形態を問わず、適用されます。
そのため、正社員だけでなく、アルバイトや臨時に雇用される方なども対象です。
派遣社員の方については、派遣元の会社で適用されます。
その一方で、適用を受けない場合もあります。
適用されない方
・自営業者
・同居の家族
・法人の役員
・下請負人
・海外事業に派遣される方(出張中の場合は適用)
*一定の条件を満たした場合のみ、特別加入することができます。
以上が、労災保険の適用を受ける方の条件となります。
業務災害と通勤災害|どんな場合にもらえるの?
労災は、仕事が関係する病気やケガが原因で、収入が減少するのを補償する制度です。
そのため、病気やケガの原因となった事故が、仕事と関係があったかどうかを見られます。
業務中の事象は「業務災害」、通勤途中の事象は「通勤災害」として、妥当性があるか判断されます。
業務災害
業務災害は、業務上の病気やケガ、障害、死亡のことです。
大きく「業務上の負傷」と「業務上の疾病」の2つに分かれます。
業務上の負傷
業務上と判断されるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの条件を満たしているか否かで、判断されます。
「業務遂行性」
業務遂行性とは、事業主の支配下にある状態を言います。
具体的には下記の3つです。
1:事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
例)会社のオフィス内で就業中
2:事業主の支配・管理下で業務に従事していない場合
例)休憩時間中
3:事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事
例)出張中、外回り中
これらに該当するときは、事業主の支配下にある状態と言われ、「業務遂行性」があると判断されます。
「業務起因性」
業務起因性とは、業務と病気やケガとの間に、相当因果関係があるかどうかが見られます。
前述の「業務遂行性」があっても、こちらの「業務起因性」もないと、業務災害には認められません。
例えば、トラックの荷台から積荷を下ろしている際中に、強風で飛ばされた帽子を拾おうとして車にはねられた場合は、因果関係があると判断できるので「業務災害」となります。
一方で、業務がひと段落したところで、通りがかった友人にトラックを運転させてほしいとせがまれ、助手席に乗って付き合った時に車と衝突した場合は、業務との因果関係はなく「業務外」すなわち、業務災害とは認定されません。
前者は、事業主の管理下にある事象と言えますが、後者は私的行為と言えます。そのため、業務起因性の有無の判断が変わります。
事業主の管理下にある事象がどうかを判断の参考にしましょう。
業務上の疾病
疾病の場合も、業務との間に《相当因果関係》が認められる場合に、労災保険の対象となります。
一般的に、次の3つを満たした場合に認められます。
1:労働の場に有害因子が存在する
業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。
勤務先で、有害なものがあるのかどうか、というのが1点目の条件です。具体的には、有害な物質を排出している工場で勤務する人などがイメージしやすいですね。
2:健康障害を起こすほどの有害因子にさらされた
健康障害を起こすほどの有害因子とは、その量や濃度、期間などといったことが影響してきます。
例えば、濃度の濃い放射線物質を一定時間受けてしまうと、リスクになりますね。こういったことが判断材料になってきます。
3:発症の経過および病態
業務を通して発症したか等がみられます。
該当の業務につく前から発症している場合は、認められません。
一方で、有害物質の種類によっては、潜伏期間が異なりますので、症状によって判断は異なってきます。
以上を加味し、業務上の疾病に該当するか否かが判断されます。
通勤災害の認定
通勤災害とは、通勤による病気やケガ、障害、死亡のことです。
通勤災害と認定されるには、その事故が通勤と相当因果関係があるか否かで判断されます。
例えば、車に轢かれた、駅の階段から転落した、などは通勤災害と認められます。
一方で、自殺や、怨恨を持ってケンカを仕掛けて負傷した、などは認められません。
受給金額|いくらもらえるの?
労災保険は、その給付の種類によって受給金額が異なります。
ここでは大まかに紹介します。詳細は各給付単位でご確認ください。
給付名称 | 給付内容 |
療養補償給付 | 療養の行為そのものを行う現物給付、もしくはその費用 |
休業補償給付 | 休業4日目から給与日額の80%相当額 |
傷病補償年金 | 給与日額の313~245日分+特別支給金 |
障害補償給付 | 給与日額の313~131日分の年金か503~56日分の一時金+特別支給金 |
遺族補償給付 | 給与日額の153~245日分の年金+特別支給金 |
葬祭料 | 原則31.5万円+給与日額の30日分 |
介護補償給付 | 常時介護の場合、介護の費用として支出した金額を上限105,290円まで |
*給与日額とは正確には給付基礎日額を指します。
*障害の程度によって給付額や年金か一時金の支払いになるかが判断されます。
*遺族給付は、亡くなった労働者の方の給与と対象となる遺族の続柄や人数で異なります。
*介護給付は、常時介護か随時介護、また親族から介護を受けた日などで異なります。
申請手続き|どうやったらもらえるの?
労災に該当し、給付を受けたい場合の申請方法についてご案内します。
会社によっては、本人に代わって申請手続きをしてくれるところもあります。まず先に、会社に相談するのが良いでしょう。
本人が手続きをする場合は、以下の流れになります。
step
1請求書を入手
給付ごとに必要な請求書が用意されています。
厚生労働省のホームページから、該当の請求書を入手しましょう。
step
2請求書の記入
必要事項を記入して埋めてください。
中には医療機関や事業主に記載してもらう項目もあります。
万が一、事業主に協力を得られない場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。
step
3労働基準監督署へ提出
請求書と必要な添付書類を用意して、労働基準監督署へ提出します。
記載内容や添付書類を元に、給付内容が判断されます。
ここで、正しく労災と認定してもらうため、前述の認定基準も参考にし、労災と認定してもらえるだけの証拠を揃えておけると、より確実なものとなります。
以上となります。
尚、給付を受けるタイミングは手続きを行い、審査が通った後になるため、はじめは実費負担が必要になることを注意しておきましょう。
まとめ
ポイントを整理します。
- 基準を満たせば仕事中も通勤中も労災認定される
- 正社員だけじゃなくバイトや派遣も対象になる
- 障害の程度が重いと継続的に給付がある
認定されないか判断しづらい場合も、確認するようにしましょう。