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2019年の出生数|減少見通しを公表
2019年12月24日に、厚生労働省より「人口動態統計の年間推計」が公表されました。
その内容は、悲しいことに出生数が大幅に減少する見通しというものでした。
出生数86万4千人、前年比で5.92%減と急減したのです。
もともと人口減少などの影響もあり、減少の予測はされていました。
とは言え、令和生まれを狙った「令和ベビー」なども予想され、2019年は多少明るい結果も期待されました。ところが、結果は、期待を裏切り、2018年の減少幅よりも大きく減少します。また、想定されていた2年先の減少数と同じぐらいとのことで、なかなかに厳しい状況が伺えます。
令和婚の影響?これから増えるという期待の見解
「令和ベビー」は期待ほど増えなかったものの、「令和婚」の影響をこれから期待する意見もありました。
結婚の時期を令和に合わせたことで、子どもの出産はこれから現れるのでは、という考えです。
もちろん、少なからず、そういった影響もあるかもしれません。ただ、仮に多少その影響がプラスに出たとしても、根本的な問題は解決していません。大きく出生数が伸びるとは考えづらいでしょう。淡い期待を持たず、子育て環境の改善に、より一層注力することが求められます。
実際は子育てしづらい社会の影響が背景
実際は、子育てしづらい環境を、もっとスピード感を持って改善していかなくては、なかなか難しいでしょう。SNS上でも、令和の影響ではなく、単純に子育てしづらいからだと、悲痛な声が見受けられます。
国の政策も色々と実施してきた中ではあるものの、今回の数値に目を背けてはいけません。今まで以上に、子育て環境の改善は急務です。改善を急がなければいけないことを、国も、企業も、そして子どもがいない大人たちも含め、一人一人がもっと社会課題として、この問題を直視しなければいけないのです。
出生数の減少に影響を与えているもの
出生数の減少に影響しているものは、何が考えられるでしょうか。
大きくこの3点があります。
- 晩婚化|初婚年齢の変化
- 未婚率の増加
- 労働・社会環境
それぞれ見ていきましょう。
晩婚化|初婚年齢の変化
晩婚化すると、どうなるのか。
どうしても20代前半など若いうちから子どもを産むことに比べ、産める人数に限りが生じやすくなります。
1950年頃は、初婚の女性年齢は20代前半でした。これが年々徐々に上昇し、平成30年(2018年)には男性が31.1歳、女性が29.4歳となっています。
未婚率の増加
未婚率も上昇しています。
1950年には男女ともに1~2%だった未婚率が、2015年時点で男性が23.37%、女性が14.06%となっています。
昔の未婚率の低さにも驚きますが、2000年を過ぎてからは二桁台で、男女ともに未婚率が高くなっています。
労働・社会環境
前の2つは、人それぞれ幸せの形が多様化しているため、そういった背景もあると考えます。
現状を踏まえ、改善すべきは労働・社会環境ではないでしょうか。子育て世代が働きやすい環境を、もっともっと整える必要があります。
特に下記5点は改善したいところです。
- 採用のあり方
- 労働時間
- 将来不安
- 妊婦や小さい子への配慮
- 子育てに掛かる費用
一つづつ見ていきます。
1:採用のあり方
新卒一括採用など、大手企業ではまだまだ中途採用の割合が低く、規模が大きくなるほどその割合は大きいです。
多くの人は高校・大学を卒業すると、直ぐに就職し、そのまま働き続けることが一般的なモデルとなっています。卒業後直ぐに就職しなければ、望む仕事に就きづらいことも一因でしょう。
新卒一括採用を見直し、中途採用をもっと取り入れることで、働くタイミングを選択しやすい社会が望ましいです。
2:労働時間
残業が多い環境では、夫婦の時間も、子育ての時間も現実的じゃなくなります。
また、保育園や幼稚園への預けやすさや、何か起きた場合の対応なども考えると、残業だけでは解決できません。休みの取りやすさや、働く時間帯を柔軟に選択できる環境が求められます。
働き方改革の一環で、労働時間の上限規制も適用されるようになりますが、全ての人へ一律に残業規制を設けるだけでなく、更につっこんだ改善が必要でしょう。
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3:収入や将来不安
老後2000万円問題が代表されるように、将来のお金の不安は否めません。
全世代が安心できる社会保障制度の再構築が急務です。結婚を前向きに考えられない理由には、やはり収入の問題があがってきます。
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4:妊婦や小さい子への配慮
これだけ子どもの数が少なくなると、他人の子どもだからといって無関心にならず、皆で大切にしていくべきはずです。
それにも関わらずマタハラという言葉が代表するように、心無い言葉や、行動をされる方がいるのが現状です。
職場環境にとどまらず、交通機関や、外出先など、優しくない環境は他にもあります。
子どもは泣くもの。それは全ての大人たちが通ってきた道です。それなのに、泣いている子どもや親たちに厳しい言葉を掛ける人がいるのです。こういったことも、安心して子どもを産みづらいと思わせてしまっているのです。
待機児童の問題も改善されない中、託児所付きの職場が注目を浴びました。こういった取り組みも増えていくことが望まれます。
一人一人の意識で、優しい社会になってほしいですね。
5:子育てに掛かる費用
子どもが生まれてから大学までを考えると、養育費と教育費で2,000万円以上掛かると言われています。
すべて国公立ではなく、私立に入るとなると、もっと掛かるということです。
こういった情報を聞いてしまうと、何人も育てることや、子どもを育てること自体に、二の足を踏んでしまいますね。奇しくも子育てに掛かるとされる費用は、老後2000万問題とほぼ同じ金額なのです。。
ただ、全ての人が平均的な調査データで振り回されるべきではないと思います。
最近ではインターネットで無料で閲覧できる情報や、YouTubeなどの動画も増えています。質の高い教育を受けるために、必ずしも多くのお金が必要、と考えなくても良くなるかもしれません。
子育てに対する多様性が認められ、採用や仕事自体の考え方が変わることで、こういった点の不安も和らぐのではないでしょうか。
子どもが減れば今の社会保障制度の維持も難しく
子どもが減少している問題は、全ての人に影響する問題です。
今でさえ、不安視されている「年金」や「医療費」の負担増などの問題は、過去に想定した出生率の減少を踏まえて議論されているものです。
それが、今回、2年も前倒しで出生数が減少してしまったということには、強い危機感を感じます。
子どもが減るということは、将来の働き手が減ることと同じであり、膨らむシニア層や、支援を必要とする人を支える、支え手がいなくなるということです。
そうなれば、ますます「年金」も満足な「医療」も受けられなくなる可能性があります。
増税した分のお金も、膨らむ医療費や、過去から積み上がっている国の借金に回っているので、未来を良くするための予算はどの程度掛けられるのかという問題があります。
そのため、全ての人にとって他人事ではなく、一人一人の意識改革が求められるのです。
悲観的な話だけでなく合計特殊出生率はキープ
とは言え、悲観的な話だけではありません。
幸い、下がり続けていた「合計特殊出生率」は、2012年頃より1.4の水準を維持しており、今回も維持しています。
「合計特殊出生率」は、一人の女性が生涯に生む子どもの数です。出産可能年齢(15~49歳)の女性に限定し、その範囲で生まれた子どもの数を元に算出されます。
晩婚化の流れもある中で、キープできているということは、出産可能年齢の女性たちがなんとかちょっと頑張れているという見方ができます。
これを下げることなく、出生数自体が増えていくように、皆で「子育てしやすい環境」を考えていきたいですね。